1 重力単位系とSI単位系

建設分野に限らず、工学・技術の分野で幅広く使用されてきたのは、重力単位系です。
これは、長さにメートル(m)、質量にキログラム(kg)、時間に秒(s)、電流にアンペア(A)、温度にケルビン(K)を基本単位としたMKSA単位系のうち、質量の代わりに重量(重量キログラム)を用いるものです。
もともと、人間は物の重さ(重量)を、それぞれの物体が本質的に備えている量(質量)と見なして、手や肩に受ける感覚量で把握してきました。「質量」と「重量」を厳密には区別しないで使用してきました。
一方、SI単位系の一量一単位の原則から、「質量」と「重量」を明確に区別する必要が出てきました。そこで、SI単位系では、重量(=力)の単位を、質量(kg)×加速度(m/s2)の積として、新たにN(kg・m/s2)(ニュートン)を用いることになったのです。
なお「質量」と「重量」の区別は、1960年の国際度量衡総会におけるSI単位系の採用に先立ち、1901年の国際度量衡総会において決定されています。以下に概要を示します。


 
(1) キログラム」は質量の単位で、それは国際キログラム原器の質量に等しい。
 
(2) 重量という言葉は力と同じ性質を持つ物理量を表し、ある物体の重量はその物体の質量と地球重力の加速度との積に等しい。特にある物体の標準重量は、その物体の質量と標準重力との積である。
 
(3) 度量衡の国際的使用のために採用された地球重力の標準の値は、すでに多くの国で法制的に採用されている980.665cm/s2である。


熱量を表わすカロリーは、私たちの身近な単位のひとつですが、SI単位系ではジュール(J)に統一されます。1カロリーは1グラムの水を摂氏1度高めるのに必要な熱量を示しています。また、ジュール(J)は本来仕事の単位で、1ジュール=「ある物体に1ニュートンの大きさの力を働かせて、物体を1m動かすことに相当する仕事量」と定義されています。さらに、熱量については「(1ジュールの熱量は)1ジュールの仕事に相当する熱量である」と定義され、ジュールは熱量の単位としても使用されているのです。
なお、カロリー(cal)は、SI単位系に移行しても、人や動物が摂取、代謝する物の熱量を表わす場合は「用途を限定して使用が認められる非SI単位」として、今後も使用が認められます。
 
温度については、絶対温度(熱力学温度)に基づくケルビン(K)が用いられるようになります。これまでわが国は一般的にセ氏度を用いてきましたが、アメリカなどのようにカ氏度を常用している国が多く、例えばセ氏32.2度(℃)がカ氏度では90度(。F)となり、混乱も少なくありませんでした。なお、セ氏度はSI単位の組立単位であり、今後も使用が可能です。
 
体重については、重量の単位はニュートン(N)になりますが、一般に使用されるバネばかりは、重量を計測し、それを標準的な重力場におけるものとして質量に換算した値を示しているので、日常生活の体重の単位はkg(キログラム)が用いられます。